日本雑穀アワード2023 金賞受賞企業インタビュー  ベストアメニティ株式会社 様

血圧高めの方をターゲットに、雑穀の持ち味を活かした商品を開発し殿堂入り。
32種類の雑穀をブレンド、目指したのはおいしさの相乗効果『32種類の発芽GABA雑穀米』

 

日本雑穀アワード2023で3年連続となる金賞を受賞し、殿堂入りを果たした「32種類の発芽GABA雑穀米」。多種類の雑穀をブレンドし豊かな味わいを実現するとともに、機能性表示食品として血圧高めの方の血圧を下げる効果もあります。同商品と、同じく金賞を受賞した「ナチュラルクック」の開発秘話を、ベストアメニティ株式会社商品開発部部長の新幸恵さんに伺いました。

 

  「32種類の発芽GABA雑穀米」を開発したきっかけを教えてください。

以前から当社は、8種類の雑穀を使った商品を販売してきました。商品として世の中に出すには、安定供給が欠かせません。徐々に安定供給できる雑穀の種類が増えたので、次は16種類の雑穀をブレンドした「国内産 十六雑穀米」を発売しました。そして、代表の内田弘が「32種類の雑穀をブレンドした商品をつくりたい」と考えたのです。代表は数字の8にこだわりがありまして、たとえば八宝菜の8は、たくさん具材が入っているという意味がありますよね。代表は8種類の次は2倍の16種類、次はその2倍の32種類と、実際に雑穀がたくさん入った商品をお客様に提供したいと思い、「32種類の発芽GABA雑穀米」の開発を始めました。

 

  開発時に大事にしたポイントは何ですか?

おいしさの相乗効果が最大限になるように、配合にこだわりました。当社には独自の発芽製法があります。この製法を使った発芽穀物を15種類使用し、アミノ酸の一種アラニンによって甘味や旨味など食味を向上させ、玄米臭や雑穀臭を抑え、普段雑穀を食べ慣れていない人でも食べやすくしました。さらに、使っている穀物の一部を軽く焙煎し、炊くとおこげのような香ばしい風味がほんのりと感じられるようにしました。

 

  さらに「32種類の発芽GABA雑穀米」は機能性表示食品でもありますよね。

機能性関与成分GABAを含めることで、血圧が高めの方の血圧を下げる機能を持たせました。2015年に開始された機能性表示食品制度は特定保健用食品(トクホ)に比べると、比較的低コストで届け出ができ、認められれば商品のパッケージに機能性を表示できます。当社としても機能性表示食品を扱いたいと考え、この商品で認可を目指しました。

 

  機能性表示食品と認められるまでは、大変でしたか?

提出する書類づくりは大変だと聞いていたので、そのつもりで臨みましたが、ガイドラインをじっくり読み込む必要があり、通常の加工食品以上に調べることはたくさんありましたね。データはしっかり揃っていたものの、間違えずに入力しなければならず作業に時間がかかりました。ただ、お客様の中には雑穀米に興味はあっても、どの商品を買えばよいのか悩まれる方もいます。そうしたお客様が商品を選ぶうえで、機能性を表示できればよりお役に立てるだろうという思いがあったので、頑張れました。当社の通販部門からも“ターゲットが明確で販売しやすい”と歓迎する声もありました。

 

  商品づくりの面でも、ターゲット層に合わせた工夫はされましたか?

咀嚼回数を増やし、食べ過ぎを防ぐことも心がけました。血圧が高めの方は、おかず中心の食生活を送っていたり、濃い味のおかずを好まれたりする傾向があります。程よい食感があれば、噛む回数が増えて白米を食べた時よりも満腹感が得られやすくなりますし、唾液の分泌も促進できます。部署内で試食品を食べながら、何度も検討を重ねました。「美味し過ぎると、食べ過ぎてしまう」といった意見もあり、味と量のバランスにも悩みましたね。

 

  継続して食べ続けてもらうために、心がけた点はありますか?

味だけではなく、簡単に調理できる必要もあると考えています。お米1合を炊く時に1袋入れれば済むように設計したのも、そのためです。洗う必要もありませんし、量を計ったり水加減を考えたりする必要もありません。炊く際に失敗しないように、豆類や粒の大きな雑穀はひき割り加工にして、一般的な炊飯器で白米と一緒に炊けるようにしました。調理中は濡れた手で作業する場合も多いので、濡れた手でも袋を開けやすいように、袋の材質にもこだわりました。お子様からご年配の方まで、誰でも簡単に扱えることも、商品の品質の一つだという思いがあったためです。

 

  発売後、お客様からの反応はいかがですか?

「食事に対して、罪悪感が少しなくなった」「普通の雑穀米と同じように食べられて、高めの血圧を下げてくれる効果も期待できてうれしい」といった感想が聞かれました。夫の健康を心配した妻が購入するケースが最も多く、健康意識が高い方が予防目的で食べるケースもあるようです。

 

  「32種類の発芽GABA雑穀米」は、日本雑穀アワード2023で3年連続の金賞受賞、そして殿堂入りとなりました。感想をお聞かせください。

私自身にとってこの商品は、機能性表示食品届出受理第一号商品なので、感慨深いです。機能性表示食品として届出を出す際も、社内からプレッシャーを感じていたので安堵しましたね。受賞で社内も盛り上がっています。初めて金賞を受賞した時は商品に「金賞受賞」と書いたシールを貼ったのですが、今回の殿堂入りを受けて「殿堂入り」と新たにシールを貼り替える動きも出ていますし、ホームページもつくり替えようと考えています。これを機に、さらにお客様に良さを伝えていきたいですね。

 

  今回は御社の「ナチュラルクック」も金賞を受賞しました。こちらはどんな商品ですか?

雑穀米の液状調味料です。以前代表は義理のお母様がつくったニンジンの煮物を食べて、おいしさに感動した経験があります。料理の腕がよかっただけではなく、畑から採ってきたばかりの新鮮なニンジンだったのもおいしさの理由の一つでした。都心では、収穫から食卓に上るまで多少時間がかかるため、どうしても鮮度が落ちてしまいます。誰でも最高の状態で料理をおいしく食べてもらいたい。そこで、食品の中に速やかに浸透して旨味を引き出し、さらにおいしく、コクを出すために、いくつかの原料を混ぜて液状調味料をつくってみようと考えたのです。

 

  雑穀を調味液にするのは、新しい発想ですね。

さまざまな食品に速やかに働きかけるには、液体が最適です。発酵に関する研究者に製造方法を相談し、丁寧に時間をかけて発酵・熟成させて、何パターンも試作品をつくってみました。出来上がった試作品のアミノ酸分析などを行うと、想像以上の栄養価と機能があるとわかり、うれしかったですね。
最終的には、素材に浸透する焼酎、旨味を引き出す穀物(雑穀)発酵液、コクを与える魚醤の3つの原料に行きつき、完成しました。

 

  おすすめの使い方を教えてください。

和食だけではなく、洋食、中華料理にも合います。個人的には、バニラアイスクリームに少量混ぜると、コクが増して高級感がある仕上がりになるのでおすすめです。社内でいろいろ試してみたところ、コーヒーに入れてもおいしいとわかりました。

 

  汎用性が高いので、発売後は引く手あまただったのではないでしょうか?

実際は発売してから20年ほどは、あまり売れませんでした。当初は「達人こくでーる」と名付けて販売しました。名前から使い方が想像できず、お客様も手が伸びなかったのかもしれません。代表にとっても思い入れのある商品でしたし、栄養価や機能に関してしっかりしたエビデンスがあるのにもったいないと一念発起し、「ナチュラルクック」と名前を変更。新たに提案書を作成し、今回、日本雑穀アワードに応募したところ、金賞をいただくことができ、大きな転機となりました。

 

  反響はいかがですか?

業務用として購入いただくケースが増えました。唐揚げをつくる際に下味をつけるために使用しているといった声が寄せられています。情報発信を工夫すれば良さが伝わるとわかったので、金賞受賞を励みに、もっと多くの人に知ってもらえるように頑張っていきたいと思っています。

 

  御社が考える雑穀の魅力を教えてください。

豊富なカラーバリエーションや、雑穀それぞれが持つ特有の風味と栄養など、白米にはない魅力がふんだんにあります。当社は今、九州大学と雑穀の新しい機能性について共同研究を行っています。雑穀には、まだ見つけきれていない可能性があると思うので、見つけて発信していきたいですね。そして、当社のコンセプト『からだに優しい、おいしい健康』に則り、おいしさはもちろん、見た目の楽しさ、食べる楽しさ、機能性を日々追求しながら商品開発を行っていきたいと考えています。